コマンドラインエンコーダーの設定をしていたときのことです。AACエンコーダーとしてFAACを選択肢に加えるべく(音質の面でも変換速度の面でもNero AAC Encoderの方がよいと言われていますが)、FL Studioで自作曲をリニアPCM (*.wav)形式で書き出して、コマンドプロンプトから変換しておりました。それをfoobar2000 (プレーヤーソフト)で再生すると、トラックの最後に短いノイズが付加されていました。トラックの演奏時間としても、秒単位では違いが見られませんでしたが、ミリ秒単位やサンプル数などで比較すると、リニアPCMファイルよりもわずかに長くなっていました。
foobar2000は、これらコマンドラインエンコーダーに対するフロントエンドの機能「Converter」を持っていますので、コマンドを追加したのち、foobar2000のプレイリストに自作曲を置いて変換してみたところ、演奏時間はリニアPCMファイルと一致しました。「Converter」による変換では、MP3やAAC、VorbisやFLACといった様々な形式から、foobar2000のデコーダーを通してパイプ出力され、それをコマンドラインエンコーダーに渡して符号化していると考えられます。パイプ入力されればFAACでも「正しく」変換されることになります。コマンドプロンプトで直に入力するのがダメで標準入力ならOKということがわかっても、なぜそうなるかは不明でした。
どうしてもコマンドプロンプト上で完結させるための策として、「wavファイルをFLACで圧縮して、それをデコードして、パイプでFAACに渡してAAC形式にする」という強引な案を思いついたのですが、これがきっかけとなって、原因がわかりました。FLACを用いてコマンドプロンプトから変換していたとき、「warning: skipping unknown sub-chunk LIST」と表示されました。wavファイル内にアプリケーションが独自に付加した情報があり、FLACはこれをスキップして圧縮していました。FL Studioによって書き出されたファイルには、FL Studioで再利用するための情報(たとえばBPMなど)が書き込まれていたようです。
いつも自分が公開用のMP3ファイルを作っていたときの手順を思い起こしてみると、FL Studioで書き出した後、波形編集ソフトで開いて曲の始端と終端に無音を付け、それからエンコードしていました。その手順に倣って再度FAACで変換してみたところ、コマンドプロンプト上でも問題は解決しました。波形編集ソフトで改めて書き出したことで、DAWが付加した独自の情報が消えたためと思われます。
LAME、Nero AAC Encoder、oggenc (Vorbisエンコーダー)、mpcenc (Musepackエンコーダー)などでも、FL Studioで書き出したファイルをそのままコマンドプロンプトから変換してみましたら、これらが作成したファイルはすべて、リニアPCMファイルと同じサンプル数でした。FAACだけが、wavファイルに付加されたDAW独自の情報までエンコードしてしまい、ノイズが付加されるという事態になっているようです。
当ネットレーベルに送られてくるデモの中にも、トラックの最後に短いノイズがある曲があったりします。アーティストの使用しているDAWによって独自の情報が付加され、エンコーダーがその情報も音声とみなして符号化しているのかもしれません。
自分が曲の両端に無音を付加するのは、再生を開始してから音が出るまでのマージンを始端に設け、曲が終わってからの余韻を終端で調整するためです。この作業が意外なところでいい方向に働いていたことを知り、エンコード前のもう一手間が重要だったことを改めて実感しました。
Bump Foot new releases
テクノやハウスを扱う側、Bump sideから2つ出ています。Foot sideの方がリリースが多く、差が広がっていくばかりかと思われましたが、ここに来て少し巻き返し始めてきたでしょうか。
Drugstore - Fail EP [bump150]
http://www.bumpfoot.net/bump150.html
OffaudioやSubversive Mediaなど、数々のミニマル系ネットレーベルと関わってきたスペインのグループによるEPです。カタログ番号としてもきりのいいところで、アグレッシブに攻めてきます。
Krzho - Elements Part 4 (Earth) [bump151]
http://www.bumpfoot.net/bump151.html
「Elements」プロジェクトの第一弾「Air」がリリースされたのは、去年の2月でした。それから、7月に「Fire」、11月に「Water」が続いてきて、この「Earth」へ。一つのEPに、当該の要素をタイトルに含むミニマルテクノを4曲ずつ収録するというプロジェクトは、この一年間を以って完結しました。
Bump Foot (foot168) Jack Anderton - The Missing Couple
UKのアーティストJack Andertonによる、エレクトロニックとアコースティック、フィールドレコーディングとスピーチが混じりあったアンビエントアルバムです。早くも、Bump Footの今年のベストリリースの一つになりそうだと勝手に思っています。Tr. 6「Honeymoon Cottage」が個人的なトラック・オブ・チョイスです。
Jack Andertonに当レーベルを薦めたのは、彼の同郷の友人で、No-SourceやAudiocast Productions、そしてBump Footからのリリース経験もあるSecond Thoughtとのことでした。当レーベルを利用したアーティストが、他の人にもここを薦めてくれるというのはうれしいものです。
DJ Dark Shadow - Galaxy Traveler EP (bump147)
Tatsu - Empty Inside (45rpm044)
- http://lautpoesie.narod2.ru/45RPM-Records_label/45rpm044/
- http://45rpm-records.blogspot.com/2011/01/45rpm0442011.html
今年もまた、EugeneKhaことNameless DancersことEugene Kharitonovの運営する45RPM-Recordsからリリースさせていただきました。去年制作してそのままにしていた2曲をいろいろこじつけてEPにしたような感じです。やはり4つ打ちです。チルアウト方面を向いています。
デモを送ったら通過して、そしてリリースまでわずか2日。あまりにも速かったのでちょっと驚きました。けれどもこういう迅速な対応もあるのだということを実感するのはいいものです。
Ollie Cram - Least We Forget (foot165)
今回のリリースは、アイルランド出身で現在はイギリス在住のOllie Cramによるフルアルバムです。2009年から2010年にかけて制作された楽曲は、ダブステップに大きく影響されているそうです。私の好みはトリップホップ的なTr. 6「Evening Star」でありますが。
メールに「Monotonikからリリースしたことがある」とあって、探してみたら、2007年に「Rai-Ken」をリリースしていました。Monotonikのフォロワーでもあったので、リリースされた時には聞いていたはずですが、どんなだったか思い出せなかったのでもう一度聞いてみたら、いくらか思い出しました。こちらもおもしろいアルバムなので、聞いてみるとよいと思います。
Bump Foot 業務再開
- AKU - Acid Skies [bump146]
Bump Footの2011年は、昨年のbump sideを締めくくったAKUで始まりました。今年も1〜2週ごとにリリースすることになるでしょう。アーティストたちが楽曲を公開できる機会を重視してきたスタンスは、今年も変えません。当レーベルだけでネットレーベルシーンのあらゆるジャンルをカバーすることはできませんし、レーベルオーナーとしての嗜好も関わってきますが、なるべく多様なジャンルの楽曲を扱っていきたいと思っています。