アメリカはオハイオのコロンバスを拠点とするネットレーベルDystopiaqにて、3月8日付けの「緊急」プレスリリースが出されました。
- 原文
It has been brought to my attention that Dystopiaq has been unintentionally involved in releasing “stolen” or “plagiarized” music. Our most recent release, Mzai’s Marionette, was submitted a few weeks ago by an individual claiming to be a trip-hop artist based out of Russia. However, as of March 7, we are now aware that many songs on this album were stolen from an artist recording under the name Escome and The FlyFox. I have contacted The FlyFox and am currently seeking a means to contact Escome.
I can not force any of you to do this, but I do encourage any Dystopiaq fan who downloaded Mzai to delete their release. If you posted about this release on any website, please do your best to delete any mention of the Mzai release.
If anyone has any information regarding Mzai or the origin of any of the songs on the release, please e-mail us at info [at] dystopiaq [dot] com.
We also request that any Russian-English speaker that can attempt to translate this letter for us to Russian, please contact us at info [at] dystopiaq [dot] com.
If anyone intends on trying to release stolen music on Dystopiaq, you must know that it won’t last for long. We will not tolerate any “artist” who wants to use Dystopiaq as a means to misrepresent art.
- てきとーな意訳
Dystopiaqが「盗まれた」或いは「本物と偽った複製の」楽曲のリリースに意図せず関わったことが注意をひきました。私たちの最新のリリース、MzaiのMarionetteは、ロシアを拠点とするトリップホップアーティストを名乗るとある個人によって数週間前に送られました。しかし、3月7日現在、このアルバムの曲の多くがEscomeおよびThe FlyFox名義でレコーディングしたアーティストから盗まれたことが判明しています。すでにThe FlyFoxにコンタクトをとり、目下Escomeへのコンタクト手段を探しています。
こんなことは強いられないのですが、Mzai(のアルバム)をダウンロードしたDystopiaqファンには、リリースを削除することを薦めます。このリリースをどこかのウェブサイトに投稿したのなら、Mzaiのリリースへの言及を削除するよう最善を尽くしてください。
Mzaiやリリース内の楽曲の出自に関する情報をお持ちの方は、info [at] dystopiaq [dot] comまでメールをお送りください。
ロシア語と英語のスピーカーでこの文書をロシア語に翻訳して頂ける方が居りましたら、info [at] dystopiaq [dot] comまでお知らせください。
盗作の楽曲をDystopiaqからリリースしようとしている者は、それは長くはもたないことを知らなければなりません。Dystopiaqを偽りのアートの手段に利用しようとする「アーティスト」を、われわれは黙って許しておくわけにはいきません。
「盗まれた」或いは「本物と偽った複製の」楽曲のリリースに意図せず関わってしまったからです。
当レーベルに「アーティスト」からオファーがあったのは、確か一か月くらい前だったかもしれません。Dystopiaqよりは後でしょう。デモを聴いてそのクオリティの高さに感心し、ぜひともリリースしたいと考え、そして4月3日、その日となりました。サイトを更新した後は、リリースしたアーティストに「『リリースしました』メール」を出すのが慣わしになっているので、今回もそうしました。その際、Mzaiに送ったメールはエラーで返ってきました。たぶん一時的な不具合で、あとでもう一度送れば大丈夫だろうと考えました。
サイト更新から1時間半後、チューリッヒから「垂れ込み」が舞い込んで来ました。DEEPGOA's electronic sessionsの運営人から、これを読んでほしいというメールが来て、この一件を知った次第です。すぐさま当該のリリースをサスペンド状態にしました。Deepgoaによると、「アーティスト」は、ブルガリアのネットレーベルDusted Wax Kingdomからもリリースしていたようです。DystopiaqとDusted Wax Kingdomがそれぞれこのリリースにあてていたカタログ番号(dystopiaq015とDWK082)は、すでに他のリリースに置き換えられています。当レーベルも、これにあてたカタログ番号(foot174)を置き換えることにしています。
ネットレーベルは、楽曲を制作する側と公開する側の相互信頼で成り立っている面もあります。盗作か否かを判定するのは、曲を聴いても心当たりがなければ不可能です。「アーティスト」がオリジナルだと主張すれば、その楽曲に聴き憶えがない以上オリジナルなのであり、われわれレーベルもまたそう考える、ということになります。そうして、アーティストの楽曲が「アーティスト」によって盗まれたという事が、このネットレーベルシーンでも起こってしまいました。各々のレーベルが密に連絡を取り合うというのは、運営者どうしが単なるメールのやり取り以上の知り合いだったりしないとなかなか難しく、そういったネットレーベルの孤立独立の状況を、「アーティスト」は狙ってきたのかもしれません。
しかし、ネットレーベルシーンには熱心なリスナーやレビュアーがいます。今回の件に関しても、垂れ込みをもらったことで事態の収拾に至ることができました。Dystopiaqの言う通り、
それは長くはもたないのです。ネットレーベルそれぞれはつながりはなくても、リスナーやレビュアーがシーンを見渡しています。他のレーベルに降りかかった事態を報告してくれます。アーティストとレーベルに接点がなくても、リスナーやレビュアーにはそれがあるかもしれません。アートを発信する側も受け取る側も、偽りのアートを許さない態勢を持っています。