オンライン依存性症候群

洋楽(以前は全般、次いでSmooth Jazz、最近はCafé Del Mar)とアニメが好きな人が、ネットレーベルの運営と音楽活動をしながらネットレーベルを旅していました。今はネットレーベルの運営を継続しつつアニメを観て、ここにその記録を書き記しています。

A release a few months keeps the netlabel artists away

すでに去年のことだが、Internet Archive - Netlabelsのフォーラムに、「A release a day keeps the netlabel fans away」なるタイトルで、「ネットレーベルのリリースについて、毎週同時リリースとか、3-4日おきに一つリリースするのは多すぎる。1-2ヶ月に一つくらいが適当だ」という意見をした人がいる。数多くのネットレーベルをチェックしている人にとっては、多すぎるリリースのチェックは苦労事なのだろう(当レーベルもリリースペースが頻繁であり、いつもチェックして頂いている人にとって、ある程度のストレスを与えているだろうことは留意しなければならない)。
だがそんな意見は、その人(自称「netlabel addict」らしい)のチェックしているネットレーベルが多過ぎるのに原因の一部があると思う。ネットレーベルのリリース間隔が多くなれば、そりゃあチェックにかかるコストは減るし、楽なことだろう。だが、それはリスナー側のことしか考えていない故の意見だ。ネットレーベルはリスナーが居なければ意味がないが、楽曲を提供してくれるアーティストがいなければ始まらない。リリース間隔をあけると言うことは、アーティストにとっての機会を狭めることである。
アーティストが楽曲をレーベルに提供するとき、それはアーティストにとってのそのときの「旬」を含んでいる場合もある。満を持してレーベルの運営者にメールを送ってみると、好感触を得たのは良いが、「リリースまで数ヶ月待ってね」みたいなことになる。例えば、「今出せばこの季節にぴったり」みたいな作品群を、まったくマッチしない時期にリリースされる、などなど。それを、全てのアーティストが納得するだろうか。
ネットレーベルシーンのリスナーは、待たなくても良い。待つようなことになるのならば、チェックするレーベルを増やしてみればいいからだ(もちろん、ある特定のレーベルに注目すれば、待たされることは確実にある)。その一方でアーティストには、待たされるという状態がいつも発生する。リリースペースを超える間隔でストックがたまっていけば、後のアーティストほど待たされることになる。
アーティストは、自分の作品が公開されるまで、どの程度待てるだろうか。或いは、どの程度までを妥当と考えるだろうか(一ヶ月ならまあまあとか、二ヶ月ならなんとかとか)。半年近くとか、そんなにも待たされるところもあるかもしれない。ネットレーベルシーンに期待を寄せてやってきたアーティストが、長い待ち時間を経験させられて、次もそんなレーベルに楽曲を提供するだろうか。
JamendoとかSoundCloudとか、そういうサービスもあるし、個人でサイトを立ち上げて公開なんてことだってできる。ネットレーベルの「反映」がそんなにも遅いことを見せ付けられたアーティストは、多分ネットレーベルから離れていくだろう。アーティストは、個人で公開するよりもレーベルから公開してもらった方が他人の目に留まりやすい、などとということを期待してレーベルにやってきたのに、待ち時間が長ければ、結局その間、そもそも他人の目に留まりはしない。
自称「netlabel addict」は、ネットレーベルシーンに「freedom + quality」を求めている。「freedomだけで毎日リリースしてたら、リリースの量にうんざりしてファンが離れていく」という主張らしいが。Internet Archive - Netlabelsにアップロードされるリリースを全部チェックするような「netlabel addict」だからこそ、「なんだよこれ」みたいなのに出くわすのだろうが、そんな楽曲を扱うレーベルに出くわしたら、さっさとそっぽ向けばいいのだ。「私はnetlabel addictだ。Internet Archiveにアップロードされるネットレーベルを全部チェックしている。だからそんなにバンバン出したりすんなよ。こうもくだらんリリースばっかりだと、良いリリースを見つけるのに苦労すんだよ」なんて考えは、ただのエゴに過ぎない。そもそも、そんなチェックの仕方をする人が、他にどれくらいいるのか、疑問だ。
ネットレーベルシーンが「なんでもあり」だからこそ、毎日どこかでリリースされるようなことになっている(注目の度合いは別として)。そういうところがネットレーベルシーンを活発にさせているとも言える。活発なんだから、そこにファンも、アーティストもいる(規模は別として)。Clinical Archivesが、なぜあのペースでリリースし続けるのか。Internet Archiveで見る、Clinical Archivesのダウンロードの多さは、ダウンロードカウンターの信頼性はともかく、あのネットレーベルが如何に注目されているかを表していると言える。Clinical Archivesが、デモを受け取ってからリリースするまでにどれくらいの間隔をあけているのかは与り知らぬところであるが。
レーベルのリリースペースを超える勢いでアーティストが集まった時、レーベルはどう対処するか。ポリシーを貫いてペースを維持するか、アーティストの期待に応えるべく、ペースを上げるか。私(Bump Foot)は後者を選んだ。他所のネットレーベルにデモを送り、そこで待たされた経験もある。「こんなに待たせるようなことは、あっちゃいけない」と思ったから、ストックのある限りは毎週リリースしている(それでも幾分、アーティストを待たせてしまっているのだが)。「比較的すぐにリリースしてくれる(対応が早い)」とか、「ダウンロード数が多い(注目されている)」とか、そういう期待を持つアーティストがいる。私は、アーティストの側に立ったレーベルの運営を心がけたい。
「量より質 (quality over quantity)」を唱えるレーベルやリスナーもいるし、その視点は大切だ。闇雲にリリースすることはいいことではないのも確かだ。しかし、アーティストを数ヶ月にわたって待たせ続けるのは、さらによくない。私に言わせれば、「A release a day keeps the netlabel fans away」よりもむしろ、「A release a few months keeps the netlabel artists away」だ。